ビーチボーイズ「スマイル」

制作に入って、途中で挫折してしまって、しかし、「もし発表していたら世紀の名作」になったであろう、と後になってから言われるアルバムというのがあって、しかし、発表しなかったのだから、完成しなかったのだから、結局未完成品なのである。
こういうアルバム達が、60年代に集中しているのも面白い。

フーの「ライフ・ハウス」も結局ピート・タウンジェントの構想が大きくなりすぎて、途中でアイディアが壮大になりすぎて、結局断念。
完成していたら、間違いなくロック界を代表する大傑作になっていたと思われる。
「フーズ・ネクスト」と名を変えて発表して、今では名作として聴かれているけれど、本人はずっと「フーズ・ネクスト」のことを「ライフ・ハウスの出来損ない」と言っていた。(今ではそれなりに気に入っているのだろうけど・・)

ビートルズにだって、ある。
解散間際に「ゲット・バック」という、スタジオ一発録りの原点回帰アルバムを作成したのだけれど、こちらは結局完成したけれど発表されず、形を変えて「レット・イット・ビー」に生まれ変わった。
もし、「ゲット・バック」が発表されていたら、ビートルズの歴史も変わっていたかもしれない。
アルバム「レット・イット・ビー」をフィル・スペクターが再編集しなければ、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の出来に対して、ポールが怒ったりしなかったのだから。
今となっては分らないけれど。

ブライアン・ウィルソンはビートルズの「ラバー・ソウル」を聴いて、シングルの寄せ集めではなくて、アルバムとして一つの作品として仕上がっている事に衝撃を受けた。ブライアンが耳にしたのは、イギリスオリジナルの「ラバー・ソウル」ではなくて、アメリカ独自の編集になっていた「ラバー・ソウル」だった、というのは少し皮肉だけれど、それの回答として「ペット・サウンズ」を作る。
↓米国版「ラバー・ソウル」。1曲目が「ドライヴ・マイ・カー」ではなく
 「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」
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↓当時ファンからは理解されなかったけれど、ミュージシャンの間では絶大に支持をうけた
「ペット・サウンズ」
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それを聴いたポール・マッカートニーは、「ペット・サウンズ」に感動して、「サージェント~」の構想を思いつき、それを作った。
それを聴いたブライアンは、あまりの衝撃ために、創作意欲をなくしてしまって、人前には姿を見せなくなり、一線から引きこもってしまう。
「サージェント」を聴いて、途中で挫折してしまったアルバムこそこのビーチ・ボーイズの「スマイル」である。
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曲の断片は、「スマイリー・スマイル」とか「サーフズ・アップ」とかにちりばめられたけれど、しかし、それはこのアルバムのための「未完成品」を再録音したものであって、当時評価する人は少なかった。
今までも何度か、このオリジナル・バージョンがボックスセットや、禁断のブートなんかで聞けたけれど、勿論ブライアン自身がオリジナル・バージョンを元に纏め上げたのは、初めてであって、製作開始(1966年)から数えて、45年が経って発表された。
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これが出てい「たら」、「れば」、その後のビーチ・ボーイズの歴史が変わっていたのだろうか?
よく分らないけれど、そういう妄想を持ちながら聴くのが、今となっては正しいのかもしれない。
歴史は変えれないのだから。
裏ジャケにもブライアンの姿はないし、封入のブックレットには写っているけれど、しかし、目は虚ろである。おそらく、当時これを制作していても、実質ブライアン1人で構想を練って、ミュージシャンも殆ど外部のメンバーを起用して、ビーチ・ボーイズのメンバーはコーラスと歌、というパターンが多かったみたいなので、メンバーからは不満を持たれ、内容も理解されなかっただろう、きっと。
結局、ビートルズにはジョンがいて、ポールがいて、ジョージがいて、リンゴがいた。
しかし、ビーチ・ボーイズにはブライアン1人しかいなかった、ということだろう、きっと。
メンバーの中にパートナーを組める人間がいれば、ブライアンの歴史も変わっていたかもしれない。
そう思うと、何とも気の毒な気持ちになってしまう。

↓小生は今回、アナログ盤を購入しました。
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ブライアンは今回、このアルバムを纏め上げるのに、当時の音源を聞きなおしてどう思ったのだろう
。個人的には、辛かったと思うけどな。
しかし、「ワンダフル」と「サーフズ・アップ」は美しい。鳥肌が立つ。
↓「サーフズ・アップ」
http://www.youtube.com/watch?v=8WUI4DhUfnw&feature=related
↓「ワンダフル」
http://www.youtube.com/watch?v=muSou79UFXQ
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by hirowilbury | 2011-11-04 16:57 | 音楽