ロン・セクスミスの魂

今年になってロックのCDを買う枚数が減った。
ほぼロックで欲しかった昔の名作とか世界的に有名なレコードというのは一通り耳にしたはずで、旧作のリマスターCDやら、豪華なボックスセットやらも出るたびに購入してきたけれど、こちらもほぼ一巡したのではないかと思ったりする。
勿論、知名度が低いけれど名作、と言われる幻の名作の類も大概聴いてきた。
現役ミュージシャンのレコード(CD)を買う、というのも限られた人間になってきた。
なので基本的に、今年は今まで買ったロックのアルバムをじっくり聴こうと思っている。
↓今年はこのラックで聴かぬまま眠るCDをじっくり聴きたい。。。
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よく会社帰りに、CD屋に足を運ぶ。
もちろん今ではネットで買えば便利だし、値段も安い。
しかし、レコードとかCDというのを買うというのは、本来そういうものではなかったはずである。
事実、子供の頃、レコード屋を何も買わないのにウロウロして、欲しいレコードがあると、ジャケットに穴があくのではないか、という位眺めて、入っている曲のタイトルを眺めて、これはどんな曲なのだろう、と一人で空想していた。
そして、美しいジャケットや惹かれるジャケットがあると、音もわからないのに、「欲しいリスト」にミュージシャン名、アルバムタイトルをメモしたりして、「大人になったら買おう」と心に誓ったりしていた。なので、極力今でもCD屋にはよく足を運んで、自分の目で確かめる。

会社帰り、途中下車するとタワレコがあって、ここは地上6階建てで、1階から3階は無印良品というお店が入っている。そして、4階から6階までがタワレコである。そのタワレコの4階は邦楽とDVD、5階が洋楽でロックのCDが売られている。そして6階がジャズとかボサノヴァ、ワールドミュージック、ブルース、クラシックである。
少し前までなら、真っ先に5階のロックのコーナーへ行って、新作のチェックをしたりしていた。
しかし、最近行っても昔のアルバムの再発売コーナーへまず行く事が多くなった。

そして、最近はもっぱら6階のジャズのコーナーへ真っ先に行って、ウロウロしている。
昔の女性ジャズヴォーカルが好きで、昨日もアニタ・オデイの8枚のアルバムが4枚に収録された廉価盤CDとジョニー・ソマーズの1960年の「ポジテヴリー・ザ・モスト」を買った。
↓最近流行りの廉価盤。
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今のロック・ミュージシャンに対する気持ちはそれくらい小生の中で薄まってということなのだろう。もちろん、ちゃんとリアルタイムで聴き続けて、新作が出るたびに購入しているミュージシャンもいるけれど。
その一人がロン・セクスミスである。
↓ロン・セクスミスの全アルバム
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90年代にデビューしたミュージシャンで、小生がリアルタイムで追いかけている数少ないミュージシャン、それがロン・セクスミスである。
彼を知ったのは、1996年のエルヴィス・コステロのジャパン・ツアー。
前座で数曲歌ったのだけれど、これで釘付けになってしまって以来、ずっと新作が出るたびに聴き続けている。当時、コステロもロンにゾッコンで、前座の彼の演奏と歌を、ステージの袖でずっと観ていた、という話があって、コステロはえらい!と妙に感心してしまった。
↓小生が初めてロン・セクスミスを観たコステロの「オール・ディス・ユースレス・ビューティツアー」。ロンは前座でした。
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とにかく、ファーストアルバム「ロン・セクスミス」(1996年)は美しい。
今でもピッカピカに輝いている。
前にも書いたけれど、ファーストアルバムにはミュージシャンの手垢もついていなくて、素っ裸な肌触りがある。そして、これは誰もがそうだけれど、二度とファーストアルバムの純粋な音というのを再現することができない。
↓ロン・セクスミスの真珠のような1st「ロン・セクスミス」
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ビートルズもデビューアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」を作ったけれど、二度と「プリーズ・プリーズ・ミー」を作れなかった。解散間近に、もう一度「プリーズ・プリーズ・ミー」のように、幻となったアルバム「ゲット・バック」を作ろうとしたけれど、失敗した。
そして解散した。
つまり、そういうことなのだろう。
↓ビートルズ末期、「もう一度原点に戻ろう」とポールの呼びかけで全て一発どり。
ジャケットもデビューアルバムと同じショット、カメラマンで撮影。校生まで仕上がってたけれど、結局アルバムはボツ。これがアルバム「レット・イット・ビー」として再編集された。

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ロン・セクスミスはミュージシャンになる前に、郵便配達の仕事をしていたのは有名である。
小生も学生時代新聞配達をしていたので、非常に彼には愛着を覚える。
そうやって、いろんな風景を歌にしていったのだろう。
そしてその仕事をしながら、メジャーデビュー前に1枚アルバムを出している。
1996年にメジャー・デビューを果たしてからは、今までに11枚のアルバム(編集盤、共演盤を含む)を発表。歴代プロデューサーを務めたのは、あのミッチェル・フレーム、チャド・ブレイク、スティーヴ・アール、マーティン・テレフェ、そしてあのボブ・ロックである。
1stアルバムは別格として、個人的にはマーティン・テレフェのプロデュースした5枚目「コブルストーン・ランウェイ」(2002年)が大好きで思い入れも深い。
そして発表するアルバム、すべてが純粋な歌で構築されていて、こういう素晴らしいミュージシャンというのは今、いないのではないだろうか。1stアルバムの純粋さが、ずっと継続されている。
だいたい2作周期でプロデューサーを変えているけれど、ちゃんとロンの世界はすっと守られている。

12枚目の新作「フォエヴァー・エンデヴァー」が発売された。
↓新作です。
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前作「ロング・プレイヤー・レイト・ブルーマー」から約2年ぶり。
前作のプロデューサーがボブ・ロックってのはびっくりしたけれど。
↓前作は80年代のハードロック系を多く手がけたあのボブ・ロックがプロデュースを担当。
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今回はあのファーストアルバムをてがけたミッチェル・フレーム再びである。
やっぱり、コンビネーションはこの二人が一番だろう、きっと。

アルバムを手に入れた日は、仕事から酷く疲れて帰って、すぐに風呂に入って寝ようと思っていた。
また、別の日にゆっくり聴こう、と思いながらお酒の準備をしていたのだけれど、やっぱりせっかくロンのアルバムを入手したのだから軽く流しておこう、くらいの気持ちで流していた
しかし・・・。
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1曲目の「ノーウェア・トゥ・ゴー」で、お酒を注ぐてが止まる。
そして3曲目の「イフ・オンリー・アヴェニュー」で、お酒を飲みながら、インナーを観た。そして7曲目の「スネーク・アウト・ザ・バック・ドア」あたりから完全にお酒の手が止まって音楽に聞き入ってしまった。
結論から言うと、久々のロンの快作である。
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名作ではあっても、正直ここ最近の作品には迷いがあったような感じもあった。
しかし、ここでは完全に吹っ切れている。
まず、メロディが良い、そしてアコースティック・ギターでちゃんと土台が作られて、アレンジも至ってシンプルであって、余計な装飾がない。
所々、ホーンが入ったりいるけれど、ちゃんと中心にはロンの歌声がある。
ロン・セクスミスのアルバムはこうでなければいけない。

1曲目のタイトルが「ノーウェア・トゥ・ゴー」、2曲目が「ノーウェア・イズ」と否定形が並ぶのが気になったけれど、裏を返せば2曲とも「NOWHERE」→どこにもいない、と、「NOW HERE」→ここにいる、というダブルミーニングかもしれない。ジョン・レノンみたいに。
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こういう風に自分の人生を同じようにリアルタイムで、美しいアルバムを出してくれるミュージシャンがいてくれる、というのは心底嬉しい。

間違いなくポール・マッカートニー、ニック・ロウ、ニール・ヤング、その他そう多くはないリアル・タイムで聞いているミュージシャンの中で、大切なミュージシャンの一人がこのロン・セクスミスである。
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by hirowilbury | 2013-02-09 22:07 | 音楽