2012年 03月 10日 ( 1 )

確かあれは中学1年の時の夏休みも終わろうとしていた、ある日の暑い夏の終わりの夕方だったと思う。その日は、学校のクラブ活動も無くて1日レコードを聴いたり、本を読んだりしてゴロゴロと過ごしていた。
そうしているうちに外は酷い夕立になって、まだ夏の日の夕方だというのに不気味なくらい空が暗くなった。そして激しく雨が屋根を打ちつけていて、聴いているレコードの音もボリュームを上げないと聞こえないくらい、雨がトタンを叩きつける音が大きくなった。
小生が生まれ育って中学2年まで住んでいた生家は、屋根こそ瓦だったのだけれど、1階と2階の間にはトタン板ががあって、そこに雨が降りつけるとゴーっと凄い音を立てるので、そのもの凄い音が幼い頃は怖かったのを覚えている。
仕方が無いので雨が入らないように、開けていた窓を閉めてもう一枚レコードをかけた。
このレコードは昔から聴きたかったのだけど、当時ビートルズを集めるのに必死で、そこまでお金が回らなかった。
しかし、家計のためにやっていた新聞配達で貰った少ないお金の残りで、遂にそのレコードを入手することができた。
せっかく入手したレコードなのに何故かワクワクせず、恐る恐るレコードに針を置いた。おそらく聴きたいのだけれど、しかしジャケットの不気味さもあって、尚且つこういう天候だったからだろうきっと。
a0189732_23205322.jpg


針を置くとドラムがリズムを刻みだし、ギターが被さってくる。そこにある男の声が重なってきた。

 昼は夜を破壊する
 夜は昼を分断する
 だから逃げようとした
 隠れようとした
 突き進め、向こう側まで
 突き進め、向こう側まで
 突き進め、向こう側まで
 ("BRAKE ON THROUGH(TO THE OTHER SIDE)) / The Doors
http://www.youtube.com/watch?v=6BIjCW2_Uik&feature=related
それまで小生は、クラブ活動(陸上部)に明け暮れて、だけれど野球も好きで時間さえあれば友人とグローブを持って野球にでかける少年だった。
夏休みは毎日殆どはそうだったし、家にいることのほうが少なかったと思う。
とにかく、走り回っている事が好きだった。
しかし、ある日、こういう風にジム・モリソンが歌うのを聴いて、もういいのではないか、と思うようになった。もう、外で走り回って遊ぶのはやめようと。
他の友達よりもロックを聞き分ける耳、には自信があったつもりである。
その耳が正しかったのかどうなのか、よく分らないのだけれど。

その日を鏡に、小生はグローブを持って野球をしたり、外を走り回ったりして遊ぶことをしなくなった。ませたガキ、小生中学1年の夏の終わり。

ドアーズは活動中6枚のオリジナル・アルバムを発表している。
1967年に「ハートに火をつけて」でデビューしてから、ジム・モリソンが死んでしまった1971年までの間に6枚である。アルバムで言うと1stアルバムである「ドアーズ」からラスト・アルバム「L.Aウーマン」まで、5年間に6枚のアルバムを発表するというのは今の感覚では考えられないのかもしれないけれど、当時は1年に1枚はアルバムを発表するミュージシャンの方が多かった。
ビートルズだって基本1年に2枚だもんね。

発表した6枚の内、今では全てが名作ということになっているのだけれど、3枚目「ウェイティング・フォー・ザ・サン」、4枚目の「ソフト・パレード」になると、少しジム・モリソンが精彩に欠けているように思えるし、ラスト・アルバムの「LAウーマン」なんぞ、煮詰まってしまってしまって1発録りのブルースアルバムである。それくらい、ジム・モリソンはアルバムの枚数を重ねるに連れて精彩を欠いた。というか、追い詰められて行ったのだろう。
そしてドラッグの影響なのだろう、体も丸くなって行ったけれど、作品も丸くなっていった。
確かにそれらのアルバムにも名曲はある。
「ウェイティング・フォー・ザ・サン」に入っている「ラヴ・ストリート」、「ファイヴ・トゥ・ワン」狂気の果てみたいな名曲だし、ラスト・アルバムの「ライダーズ・オンザ・ストーム」だって美しい。「ライダーズ・オンザ・ストーム」の嵐の音は、当時の夏休みの夕立を思い出す。
a0189732_2144241.jpg

しかし、ドアーズの炎はファーストアルバムであるこの「ドアーズ」に凝縮されている。
すでにこの時点で彼らは完成されていて、しかしある意味未完成であって、ところが、以降それを越えられなかったということなのだろう、きっと。2nd「ストレンジ・デイズ」も名作だけれど、このファーストの荒々しさには及ばない。

結局、このファーストアルバムで彼らは燃え尽きてしまったのである。
完成度、演奏の質、そしてスタジオでのトリックなんかは格段的にセカンドアルバム以降の方が上である。しかし、結局彼らはこのファースト以上の荒々しさや、ふてぶてしさを出すことが出来なかった。

毎年夏の終わりになると、当時の夏休みの終わり、夕方の夕立を思い出す。
そんな風景さえ鮮明に記憶しているくらい、ファーストアルバム「ドアーズ」を聴いた時の衝撃度は今も残っている。

追伸
最近「L.Aウーマン」の40周年記念盤が発売された。
既に所有しているので、購入すべきか迷っているのだけれど1枚はオリジナル・アルバム、そして2枚目は未発表音源らしい。バラで2枚目だけ売ってくれないかなあ。。
しかし、出てくるな、ドアーズの未発表音源がどんどん。
すでにジム・モリソンが死んでしまってから40年も経つのに。
[PR]
by hirowilbury | 2012-03-10 20:14 | 音楽