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「ざまーみろ」 ポール・マッカートニー「RAM」再発売にあたって

今では信じられないかもしれないけれど、ビートルズが解散してソロになって、一番苦労したのはポールである。世間の評価、そして期待とは裏腹に、ポールはソロになって自分の音を確立するのに苦労した。

ジョンは「ジョンの魂」、ジョージは3枚組の大作「オール・シングス・マスト・パス」、そしてリンゴまでもが「センチメンタル・ジャーニー」でちゃんと世間の期待通りの内容でアルバムを作って、高い評価を受けた。

他の3人は自分たちの「やりたい音」や「自分の言いたいこと」を形にすれば、ビートルズとは違った「自分の音」を作り上げることが出来た。しかし、ポールが自分のやりたい音をやろうとすると、結局ビートルズになってしまう。暴言を覚悟で言うと、「ビートルズの音」というのはポール・マッカートニーの音だったのだ。
しかし、前にも書いたけれど、ポールと言う人は意地っ張りな人であって、そこは素直にビートルズの音をなぞるような事をするような人ではない。
だから、小生はポールが好きなのね、こういう意地っ張りなところが。

世界的にバカ売れしたのに、批評家を中心に「幼稚だ」と避難された1stソロ・アルバム「マッカートニー」に続いて発表されたのが、この1971年発表「RAM」である。
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今回ポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクションの第4弾として発売された。
今回はCD4枚+DVD1枚という大盤振る舞いで、しかも見たこともないような写真がいっぱい載っている豪華なブックレットや、ポール自身がスケッチしたアルバムジャケットのコンテ(手書き)原版のレプリカ、プレス用の5枚セット生写真、リンダが羊を記録した冊子など、とにかくオマケがいっぱいであって、ミーハーなポールファンの小生としては嬉しくなってしまって、何回も何回も見直している。
寝る前に布団に潜り込んで、そしてそれをニヤニヤしながら1枚1枚じっくりと見るのである。
そんな小生は今年39歳になる。
↓豪華なボックスセット!CD4枚+DVD1枚
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↓あけるとオマケいっぱい!
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↓生写真5枚!(撮影→1枚除いてリンダ・マッカートニー)
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↓ポールが書いたアルバムのアイデアメモレプリカ
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↓リンダ撮影、羊と戯れる(笑)ポール、ジャケットの別ショット(ブックレットより)
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勿論アナログも同時に再発売された。
しかし、今回発表されたこのアルバムの「モノバージョン」のミックスは美しい。
オリジナルを超越している。これは、当時まだ主流だったAMラジオ放送局用に作られたミックスだそうだ。どう聞いてもミックス違い、と思われるものもある。
このあたり、今後じっくり聞き比べてみたい。
しかし、なんでこのアルバムはジャケットが真っ白なのだろう。
当時もそうだったのかな?
↓左上に「RAM-MONO」と記されているだけ
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「マッカートニー」がスコットランドにある自宅に1人引き篭もって、全ての楽器演奏、歌、プロデュース、録音と全てポール自身がやってのけたのと違って(一部コーラスでリンダ・マッカートニー)、「RAM」はやり手のスタジオ・ミュージシャンを起用して、気分転換の意味もあったのだろう、ニューヨークに飛んで制作された。リンダ・マッカートニーの故郷はニューヨークなので、結婚直後の里帰りっていう意味もあったのかな?
↓オマケのブックレットより
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そして、名義は「ポール&リンダ・マッカートニー」である。
ジョン&ヨーコを意識したところもあったのだろう。
しかし、当時ポールが音楽に関して素人だったリンダをパートナーになぜ加えたのか、というところなどは涙が出てくる。
1からキーボードを教えて、歌の練習をさせて。
「二人ぼっちの二人」っていう感じ。少し孤立してたもんね、当時のポールは。
↓ブックレットより
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しかし、そのリンダのコーラスがその後のポールのアルバム、ウィングスの楽曲の隠し味になって、再び世界の頂点に昇りあがっていくのだから、ポールはやはり正しかったのだろう、きっと。
いや、ポールは正しかったのである。

「マッカートニーはスタジオのテストみたいなものだった」とポールが語っていたように、このアルバムでのポールは、恐らくかなり練りに練って、しかもかなりの力を込めてアルバムを作っているように思われる。だいたいポールという人は、力を込めてしまうと色々いじり過ぎて、力みが入ってしまって、オーヴァー・プロデュース気味になってしまう事が多いのだけれど、このアルバムはポールの意地がそうさせたのだろう、多少の力みはあるけれど、これぞポールというアレンジ、楽曲展開、演奏、歌、全てに躍動感がにじみ出ている。
これはポールの意地である。
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しかし、当時は「マッカートニー」と同じように世界的に大ヒットしたにも関わらず、世間の評価は手厳しかった。おそらく、当時世間はハードロック色が強く、こういうポップアルバムは評価されにくい時期だったのだと思われる。ビーチ・ボーイズだって「サンフラワー」や「サーフズ・アップ」という超傑作を作っていたけれど、殆ど評価されなかった。
ビートルズ解散直後、という事もあって「ポール大好き」というと、笑われてしまう風潮もあったと思われる。結局世間が素直にポールを受け入れる世の中ではなかったのである。


80年代、小生が学生だったころもそうである。
「ポール・マッカートニー、ビートルズがすきです」というと、馬鹿にされた。
回りにいた友人達は、誰も評価していなかった。小生が「これはポールの傑作で・・」と笛や太鼓を持って、南海ホークスや近鉄バファローズの応援団みたいに褒めちぎっても、誰も同意してくれなかったじゃないか。
ポールの新作となると、更に友人たちは見向きもしなかった。
「まだやってたの?ポール・マッカートニーって。誰か死んだやん?あれは誰やったっけ?」
と逆に質問される有様だったのである。
そんな時でも、辛い想いをしてポールファンを自称してきた小生としては、今頃になって再評価されてきても困るのである。
ビートルズだって80年代は殆ど馬鹿にされてたもんね。
だから、当時ビートルズで盛り上がった友達、というのは今でも大切な友達であって、ちゃんと付き合いも続いているのである。
あいつら、なんで当時分ってくれなかったのだろう(笑)。
このアルバムの良さが当時もっと評価されていたら、80年代のポールがスランプだの、終わっただの言われることは無かったのである。
我々ポールファンは非常に悔しい思いをしてきたのであって、当時ポールを馬鹿にした音楽評論家を小生は今でも忘れない。その評論家、そして友人に直接会って、直接「その時は馬鹿にしてくれてありがとう」と低姿勢で、丁寧に伝えてみたい(笑)。
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という訳で、自分の気持ちとしては「ざまーみろ。だから言っただろ?自分は正しかったんだ」と大声で言いたい。ミーハーなポールファンとしては当たり前のことである。
そんな小生は今年39歳になる。

正直、まだまだポールのプロデュース能力も荒削りで、編集能力が足りない部分もある。
もっと上手く出来ただろうに、という箇所だってない事はない。
アルバム全体の音だって、「バンド・オン・ザ・ラン」や「バック・トゥ・ジ・エッグ」なんかの傑作に比べると、非常に不安定な音作りだと思われる。
しかし、これがポール・マッカートニーなのだ、と大声で言いたい。
天然なのである。手作りの人なのである。
自分の才能を認めない。人に言われても自分の才能に気づかない。
あんたは長嶋茂雄か。

↓今回が復刻4弾。あ、「バンド・オン・ザ・ラン」のCDボックス写すの忘れた(笑)
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恐らくポールの新作は勿論、今後もアーカイブシリーズの発売は続くであろう。
こうなったら貴方に死ぬまでついて行きます。

↓「Ram」より、頭3曲が聴けます。気に入ったら、リマスター盤買って聴いてみてね。
http://www.youtube.com/watch?v=pSQxVJ6Khms&feature=related

※なおこのアルバムは小生のブログの記念すべき1回目の記事でした。<これです。>
by hirowilbury | 2012-05-27 19:00 | ビートルズ