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世界で唯一「ビートルズになれた男」ジェフ・リン

ジョンが亡くなって以降、ビートル3人と共演した「ビートルズ以外」のミュージシャン、ということになると彼だけでである。しかも、共演ではなく、正式に言うとプロデュースまで引き受けてしまったのだから、余計世界で唯一の男、ということになる。
そのジェフ・リンと、彼が70年代から80年代に率いたE.L.O(エレクトリック・ライト・オーケストラ)の「新作」がほぼ同時に発売された。
↓E.L.O約10年ぶりの新作「The best of E.L.O/Mr. Blue Sky」と約22年ぶりのソロ・アルバム「LONG WAVE」
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言うまでもないけれど、ジェフ・リンという人はE.L.Oのリーダーであって、70年代には一世を風靡した人である。ソロ・アルバムもびっくりしたけれど、この「E.L.O」の「新作」にはもっとびっくりしてしまった。しかも、当時のメンバーは一人もいない状態である。

まず、E.L.Oなのだけれどタイトルだけ見ると普通の「ベスト・アルバム」である。
代表曲が入っていて、何も言わなければE.L.Oの過去の名曲が入ったアルバムを買いに来たファンは単なるベスト盤だと思ってしまうだろう、きっと。しかし、なんと、ほとんどの曲がリ・レコーディングされていて、しかも殆どの演奏・歌をジェフ・リン一人で担当している。リミックスでもなくて、リニューアルである。
カヴァーというか、ほとんど完コピーに近い。アレンジさえほとんど一緒である。
本人は別に、当時のE.L.Oのオリジナルを非難しているわけではなくて、ここは単純に「当時のレコーディング技術が伴っていれば、こうしたかった」というものなのだろう。
E.L.Oというバンド自体、ジェフ・リン自身のバンドだったのだから、結局彼がE.L.Oの曲を演奏しても、結局それはジェフ・リンの音になるのである。
なので、これはこれで正しい音なのである。
今まで歴史的な大物ミュージシャンをプロデュースして復活させてきた自信なのかもしれない。
「過去の名曲のエッセンスを散りばめて、そのミュージシャンをカムバックさせた男」なのだから。
元ヤクルト監督の野村監督のような人である。

新曲「POINT OF NO RETURN」も入ってるから、純粋にE.L.O名義の新作の発表も近いということなのだろうか。それとも2001年の「ZOOM」のアウトテイクなのだろうか。そのあたり、よくわからないけれど。
↓ジェフ・リン、2枚のアルバムのインナーより近影
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そして22年ぶりとなるジェフ・リン名義のソロアルバム「LONG WAVE」である。
初のソロアルバムが1990年の「アームチェアー・シアター」で、小生が高校2年の夏だった事を思うと、本当に久しぶりである。人間で言うと、当時生まれて、今では成人式も終えている、そう書いてみるとやっぱり凄い年月なのである、22年は。

聴いてみると、全10曲、約30分程度の作品で、しかも全編スタンダート・ナンバーのカヴァーである。コステロもカヴァーしていた「SHE」、「SMILE」なんかも歌っているし、エヴァリー・ブラザーズの「SO SAD」、ドン・コヴェイの「MERCY MERCY」なんかも歌っている。もちろん全て自身の演奏で。今回はオリジナルなしである。
最近はポール・マッカートニー、ロッド・スチュワートも昔のスタンダートナンバーを歌ったレコードを出したりしているけれど、立派にオリジナルを作ることができる人がこういうカヴァーアルバムを作る、というのはどういう時なのだろう。
これから活動をリスタートさせるための、リハビリということになるのかな、やっぱり。

全編、非常に彼らしい、いつもどおりの「彼の音」であって、安心して聴ける。
E.L,Oという名義がない分、非常に肩の力が抜けていて、これからもこうすればイイのに、と思ってしまう。世間がこれからも聞きたいのは、彼のソロアルバムなのではないか、と思われる。
理由は、過去の名曲のパロディ満載だから。
おそらく、彼に斬新な音は求める人はいないだろう。求めているのは、「あ、こんなところにこんなフレーズを使ってる」といかいう「パロディ」である。
E.L.Oのアルバムではできないだろうけれど、ソロでは思う存分遊べるのではないか。
今後、ソロ活動を再開するための「テスト」「試運転」的なアルバムなのだろう、きっと。
ちなみに、奥田民生のプロデュースしたpuffyは、基本ジェフ・リン、E.L.Oのパロディであることを記しておく。
↓ソロ・アルバム「LONG WAVE」収録曲。全11曲、全てカヴァー曲。
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彼とビートルズとの関係は1986年、1987年ごろに遡る。
ジョージ・ハリスンが「CLOUD NINE」のプロデュースに彼を迎えて、制作したことが発端である。元々ジョージという人は地味な人だから、ソロ・アルバムであっても「脇役的」な所があって、主役のくせに遠慮して、脇役っぽくなってしまうところがある。
そのジョージを見事に「主役の座」に仕立てたのがジェフ・リンである。
つまり、「ジョン、ポール、リンゴの役割」をジェフが担当して、「ビートルズのジョージ」を再現したのである。

基本はロックン・ロールであって、ジョージの不思議なコード進行と、ジェフのビートルズ的な部分とがマッチして、しかもちゃんと捻りが聞いていて、これぞ「ジェフ・マジック」というものだった。これでジョージは息を吹き返し、「セット・オン・ユー」が全米1位、アルバム「CLOUD NINE」も大ヒットと大復活を遂げる(全米8位)。

↓1987年ジョージ・ハリスンの大ヒットアルバム「CLOUD NINE」
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↓参加ミュージシャンは豪華。ジェフ・リン、E.クラプトン、エルトン・ジョン。ドラムはリンゴ。
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↓アルバムからの1sシングル、かつ大ヒット「セット・オン・ユー」のシングル盤。
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その後、アルバムから2枚目のシングルをカットをする際に、そのB面に収録する曲を録音しようと再びジョージにジェフが呼ばれて、曲を新たに書くことになったのだけれど、その時ジェフと一緒にスタジオにやってきたのが、ロイ・オービスンであり、トム・ペティであり、そしてボブ・ディランであった。
そこでせっかくこの5人が集まったのだから1曲作ろう、となって、近くのダンボール箱に書いてあった「取り扱い注意」というフレーズを使って出来上がった曲があの「Handle With Care」だった、というのは有名な逸話である。
しかしこれはB面に入れるには勿体無い、どうせなら1枚アルバムをつくっちゃえ、となって結成されたのが、Traveling Wilburysだった。夢のような話である。
この時から小生のハンドルネームは全て「wilbury」を使うようになった。関係ないか、これは(苦笑)。

↓伝説のTRAVELING WILBURYS、もうこのメンバーでのレコーディングは実現は不可ですね(泣)アルバムは全部で2枚。
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ジェフはその後、ウィルベリーズのメンバーのソロアルバムのプロデュースも積極的に手がけて、見事大ヒットを記録させた。特にロイ・オービスンの復活をこの時考えた人は、ほとんどいなかったと思われる。
↓80年代後半から90年代前半にかけてジェフがプロデュースした作品たち。トム・ペティ、ロイ・オービスン、デル・シャノンなど。彼が手がけたアルバムのジャケットにはギターの登場する回数が多い様な・・・
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↓自身も初のソロを発表。現在は入手不可能の1990年発表名盤「アームチェアー・シアター」。小生の高校2年の時の思い出のアルバム。再発売希望!
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↓1992年にはリンゴの大傑作「TIME TAKES TIME」も一部手がける。リンゴの「バシャ」という的確なドラムにはジェフのプロデュースはぴったりかも?
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しかし、不思議なことに、彼に関わったミュージシャンは、それを置き土産になくなっていく人が多い。ロイも直後に急死、「ロイに代わってウィルベリーズのセカンドに参加する」と噂されたデル・シャノンまでも自殺してしまう。恐らく、同じくジェフが大部分を手がけたデル・シャノンの遺作「ROCK ON」はウィルベリーズのセカンドアルバムとして制作されていたのではないか、と思われるくらいジェフの色が濃い。

↓ジョン・レノンのデモテープにビートル3人が演奏、ボーカルをオーヴァーダブした1995年の「新曲」、「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」のシングル盤。ジェフのプロデュース。
こちらも英国盤と米国盤があります(笑


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↓ビートルズ・アンソロジーの後、ジェフが共同プロデュースしたポール1996年の名作ソロ「フレイミング・パイ」。ポール色は流石にポールが死守した感じ(笑)流石にジェフもポールの前では1ファンか(苦笑)。結局、ポールの妻リンダはこの作品への参加が最後になった。
これは珍しい?米国盤。英国盤もラックにあります(笑)
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↓ジョージ唯一の来日公演を収めたライヴ。クラプトンとの共演。1991年。小生高校を休んで大阪城公園へ観に行きました(笑)
ジェフはジョージとプロデューサーを担当。
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↓<おまけ>「セット・オン・ユー」のB面(←死語?)「レイ・ヒズ・ヘッド」。CDでは現在入手困難の名曲。最初、これの代わりにウィルベリーの曲が入る予定だったと思ってましたが、あれは結局2ndシングルだったのね。
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こうやって改めて見ていくと、やっぱり彼に関わったミュージシャンには死の匂いを感じる。
ロイ、デル、そしてジョージ、そしてポールの妻であったリンダもその後亡くなった。
ビートルズの「再結成」で、亡きジョンのカセット・テープの声を蘇らせたのもジェフだった。

なんとも不思議な人である。
本人はどう思っているのだろう。

と思いながら、ソロを聴いていたら、CD内に一枚の広告が・・・。

↓1stソロがリマスターにて再発売、の告知が!?
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by hirowilbury | 2012-10-18 19:00 | ビートルズ